声が出た暁にこの想いを君に




──朝、わたしは仕事場へ連絡をいれていた。




「はい、すいません。大丈夫です。……はい」




彼を起こさぬよう静かに電話していたけど、身動ぎした彼がわたしへ向き、目が合うとわたしはごめんなさいと、頭を下げた。




「明日は大丈夫です。……はい、では失礼します」



電話を終えるなり携帯をポケットにしまって、彼が寝る部屋を申し訳ない気持ちで覗き込んだ。



「……仕事、休んだんですか」



コクン、と小さく頷くわたしに彼は"すいません"ともう一つものすごく小さな声で"ありがとうございます"と言ってまた目を瞑った。





──昨日よりは幾分か顔色良さそう。





温くなったタオルを濡らし彼の額にのせて、わたしはベッド横に座ると、彼の寝顔を見つめる。






ここで休んでくれて良かったな……




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