声が出た暁にこの想いを君に
見間違いかもしれないけど、気になって公園の中へ入って影があった方へ目をやると──
──っ!?
木のそばにあるベンチに背を預け、力なく地面に座り込んでいる男の人がいた。
もしわたしが声が出せていたら、きっと何かしらの声がもれていたと思う。
今だけは、出なくて良かったかもしれない。
どんな人か、分からないから。
……少し様子を見ることにしたけれど、一向に動く気配はなくて……それに、良く見れば服は泥だらけで、おまけに顔にも傷がある。
公園の小さな外灯に照らされているだけで、それがただのかさぶたなのか、生傷なのかはわからなかいけど。
──どうしたものか……
別に見なかったことにして帰ることは出来る。
こんなどしゃ降りの中で見知らぬ男の人をわたしが気にかける理由はないのだから。
未だ動かず、雨にうたれたままの彼を見つめそう思っていた時、ふと先程の会話が頭を過った。