声が出た暁にこの想いを君に





「……お出かけですか」




インターホンを押す寸前だった彼に、一歩後退りわたしはバッグを元に戻した。




「いいんですか?お邪魔して」




うんうん、と頷いて彼を招き入れると、彼はわたしに白い箱を差し出す。

とりあえず受け取って白い箱を指差せば、




「お礼です。お礼。泊めて貰ったあげく仕事まで休ませてしまったので……」




と答えると彼は早くも胡座で座った。



箱の中身はなんだろう……そこまで重くはないような。


テーブルの上に置き、早速開けてみる。





──わぁ!






中にはシュークリームが二つ入っていた。



美味しそう……思いがけないスイーツに目を輝かせてしまうも、彼に目を向ければテーブルに頬杖をついていて。




「甘いもん、大丈……ぶみたいですね。良かったです」




わたしのキラキラとした目を見るなり、はいはいと目を伏せた。

でも、いいもん。嬉しいから。





「……んじゃ、俺帰りますね」



──え?





座ったと思いきや、今度は玄関に向かう彼を追いかける。

……まぁ、すぐに帰るのが正解なのかもしれないけど。





「……なんです?」



『いいえ』




なんでもない、と胸の前で手を振るも、彼は訝しげな顔をして靴を履くのをやめた。





「まだ俺にいて欲しかった……とか?」





いて欲しい、とまでは言わないけど……

なんか、こう……少し話をするのかな、なんて勝手に思っちゃってたから──




目を泳がすわたしに、彼は一歩近付いた。










「……何しても構わないって言うなら、いてもいいですよ」













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