早河シリーズ第四幕【紫陽花】
西森結衣の名前と顔に見覚えがある。
「西森さんって、以前にシェリでモデルをされていましたよね?」
「えっ! 秋山さん私のこと覚えていてくれたの? シェリに出てたのはもう10年近く前なのに」
シェリは本庄玲夏が女優デビュー前に専属モデルを務めていた10代後半から20代前半女性向けのファッション雑誌だ。
「やっぱり! 私が高校生の時に、シェリは玲夏と結衣のツートップでしたから。シェリを卒業した結衣ちゃんはどうしてるんだろうって気になっていたんです」
当時、女子高生や女子大生を中心にカリスマ的人気を誇った本庄玲夏と西森結衣はシェリの看板モデルだった。二人の私服着まわし企画やセルフメイクのページも人気だった。
玲夏は2002年にシェリを卒業後、女優デビューを果たして今やテレビで見ない日はないが、玲夏が卒業する数ヶ月前にシェリを卒業した西森結衣は表舞台から姿を消した。
「シェリを卒業してから美容専門学校に通ったの。服よりメイクが好きだったから、今の仕事が天職みたいなものかな。女優として頑張ってる玲夏のヘアメイクを担当したくて、昔のコネで玲夏の専属ヘアメイクにさせてもらったんだ」
「一緒にモデルをしていた玲夏さんのヘアメイクを西森さんが手掛けるなんて素敵ですね」
なぎさと結衣が和やかに会話をしている時も、香月真由は苛立ちを隠せずに歩き回り、玲夏と蓮は素知らぬ顔で自分の世界に入っていた。
やがて集合時間を20分過ぎた頃に速水杏里が表れた。
「速水さん、20分の遅刻よ」
「すいませーん。でも新幹線は37分発ですよね? 充分間に合うんだからいいじゃないですか」
真由の非難の声が飛んでも、遅刻をした杏里はまったく悪びれない。
「香月さんも杏里ちゃんも性格に癖がある者同士で仲が悪いのよ。今回のキャストは見事にまずいメンバーが揃っちゃったな」
小声で囁いた結衣の嘆きになぎさも同意の頷きを返した。ピリピリとした雰囲気のまま、撮影チームは新幹線のホームに降りた。
無事に全員が6時37分発の新幹線に乗車したが、列車内でまたトラブルが発生した。
新幹線の座席は全員分が指定席。主演の本庄玲夏や準主役の一ノ瀬蓮、主演クラスの役者達は二人席をひとりで使えるよう配慮されている。
問題は相席になる役者達。誰の隣に誰が座るかで揉め、ここでも騒動の中心人物は速水杏里だった。
「西森さんって、以前にシェリでモデルをされていましたよね?」
「えっ! 秋山さん私のこと覚えていてくれたの? シェリに出てたのはもう10年近く前なのに」
シェリは本庄玲夏が女優デビュー前に専属モデルを務めていた10代後半から20代前半女性向けのファッション雑誌だ。
「やっぱり! 私が高校生の時に、シェリは玲夏と結衣のツートップでしたから。シェリを卒業した結衣ちゃんはどうしてるんだろうって気になっていたんです」
当時、女子高生や女子大生を中心にカリスマ的人気を誇った本庄玲夏と西森結衣はシェリの看板モデルだった。二人の私服着まわし企画やセルフメイクのページも人気だった。
玲夏は2002年にシェリを卒業後、女優デビューを果たして今やテレビで見ない日はないが、玲夏が卒業する数ヶ月前にシェリを卒業した西森結衣は表舞台から姿を消した。
「シェリを卒業してから美容専門学校に通ったの。服よりメイクが好きだったから、今の仕事が天職みたいなものかな。女優として頑張ってる玲夏のヘアメイクを担当したくて、昔のコネで玲夏の専属ヘアメイクにさせてもらったんだ」
「一緒にモデルをしていた玲夏さんのヘアメイクを西森さんが手掛けるなんて素敵ですね」
なぎさと結衣が和やかに会話をしている時も、香月真由は苛立ちを隠せずに歩き回り、玲夏と蓮は素知らぬ顔で自分の世界に入っていた。
やがて集合時間を20分過ぎた頃に速水杏里が表れた。
「速水さん、20分の遅刻よ」
「すいませーん。でも新幹線は37分発ですよね? 充分間に合うんだからいいじゃないですか」
真由の非難の声が飛んでも、遅刻をした杏里はまったく悪びれない。
「香月さんも杏里ちゃんも性格に癖がある者同士で仲が悪いのよ。今回のキャストは見事にまずいメンバーが揃っちゃったな」
小声で囁いた結衣の嘆きになぎさも同意の頷きを返した。ピリピリとした雰囲気のまま、撮影チームは新幹線のホームに降りた。
無事に全員が6時37分発の新幹線に乗車したが、列車内でまたトラブルが発生した。
新幹線の座席は全員分が指定席。主演の本庄玲夏や準主役の一ノ瀬蓮、主演クラスの役者達は二人席をひとりで使えるよう配慮されている。
問題は相席になる役者達。誰の隣に誰が座るかで揉め、ここでも騒動の中心人物は速水杏里だった。