早河シリーズ第四幕【紫陽花】
『撮影の時に津田に変なことされなかったか?』
「私は大丈夫だったけど、他の子はどうだろう。エッチな写真撮ってそれをネタに女の子ゆすってるって噂もある。早河さんは津田さんを調べてるの?」
『今抱えてる案件で津田の名前が浮上したんだ』
水割りを飲んだ後に煙草を吸う。一気に体内に流れ込む煙草とアルコールが早河を夜の街の住人に仕立てていく。
「津田さんのことでひとつ、スペシャルな情報教えてあげよっか?」
『スペシャルな情報?』
「アフター行ってくれるなら教えてあげてもいいよ」
ミレイは意味深に笑って早河の腕に手を絡めた。
『まだ仕事残ってるからアフターは無理。ボトル入れるからそれじゃダメ?』
ミレイのふわふわと巻いた髪に指を絡ませ、このような場面でしか使わない甘い声で早河が囁く。
上目遣いで懇願するミレイとの駆け引き。夜の街ではこんな駆け引きは日常茶飯事。
「えー。せっかく久しぶりに会えたのに。ここじゃない所でゆっくりお話しようよ」
『また今度、ケーキでも食べながらゆっくりしような』
「……早河さん、まさか私のこと、まだ高校生だとでも思ってるの? 私、もう23歳よ。ハタチ過ぎた女が二人でゆっくりしたい場所はカフェでもケーキ屋でもないのよ?」
不満げに口を尖らせた彼女が早河の肩に小さな顔を寄せた。
『カフェでもケーキ屋でもないなら遊園地か? 俺はジェットコースターは苦手なんだが』
早河はあくまでもしらばっくれる。ミレイの誘惑も早河には効果がない。
「もうっ。早河さんの馬鹿! ドS! 意地悪! 私は早河さんとならベッドインコースもOKなのになんでいつもいつもかわすのよぉ」
『ベッドインコースは本当に好きな男とだけにしておけ』
「その好きな人が早河さんなんですよー。はぁ。早河さんには敵わないなぁ」
早河から離れたミレイはクスッと笑った。
「私も一応はこの店のナンバー3なのよ。アフターだって他のお客様を私からお誘いすることはないの。そんな女からアフターに誘われて、しかも他のお客様には許可しないベッドインコースまで付いてきてるのに飛び付いて来ないなんて。わかってたけど変な人。まさか早河さん、本当は男が好きなんじゃ……」
『勝手に妄想して俺をそっちの世界の住人にするな。俺の中のミレイはメルシー人気ナンバー3のミレイじゃなく、家出して俺に補導された17歳の影山深麗《かげやま みれい》のままなんだよ』
水割りのグラスを空にした。少し頭がぼうっとする。アルコールだけではなく、薬でだましだましに誤魔化した風邪の影響かもしれない。
「私は大丈夫だったけど、他の子はどうだろう。エッチな写真撮ってそれをネタに女の子ゆすってるって噂もある。早河さんは津田さんを調べてるの?」
『今抱えてる案件で津田の名前が浮上したんだ』
水割りを飲んだ後に煙草を吸う。一気に体内に流れ込む煙草とアルコールが早河を夜の街の住人に仕立てていく。
「津田さんのことでひとつ、スペシャルな情報教えてあげよっか?」
『スペシャルな情報?』
「アフター行ってくれるなら教えてあげてもいいよ」
ミレイは意味深に笑って早河の腕に手を絡めた。
『まだ仕事残ってるからアフターは無理。ボトル入れるからそれじゃダメ?』
ミレイのふわふわと巻いた髪に指を絡ませ、このような場面でしか使わない甘い声で早河が囁く。
上目遣いで懇願するミレイとの駆け引き。夜の街ではこんな駆け引きは日常茶飯事。
「えー。せっかく久しぶりに会えたのに。ここじゃない所でゆっくりお話しようよ」
『また今度、ケーキでも食べながらゆっくりしような』
「……早河さん、まさか私のこと、まだ高校生だとでも思ってるの? 私、もう23歳よ。ハタチ過ぎた女が二人でゆっくりしたい場所はカフェでもケーキ屋でもないのよ?」
不満げに口を尖らせた彼女が早河の肩に小さな顔を寄せた。
『カフェでもケーキ屋でもないなら遊園地か? 俺はジェットコースターは苦手なんだが』
早河はあくまでもしらばっくれる。ミレイの誘惑も早河には効果がない。
「もうっ。早河さんの馬鹿! ドS! 意地悪! 私は早河さんとならベッドインコースもOKなのになんでいつもいつもかわすのよぉ」
『ベッドインコースは本当に好きな男とだけにしておけ』
「その好きな人が早河さんなんですよー。はぁ。早河さんには敵わないなぁ」
早河から離れたミレイはクスッと笑った。
「私も一応はこの店のナンバー3なのよ。アフターだって他のお客様を私からお誘いすることはないの。そんな女からアフターに誘われて、しかも他のお客様には許可しないベッドインコースまで付いてきてるのに飛び付いて来ないなんて。わかってたけど変な人。まさか早河さん、本当は男が好きなんじゃ……」
『勝手に妄想して俺をそっちの世界の住人にするな。俺の中のミレイはメルシー人気ナンバー3のミレイじゃなく、家出して俺に補導された17歳の影山深麗《かげやま みれい》のままなんだよ』
水割りのグラスを空にした。少し頭がぼうっとする。アルコールだけではなく、薬でだましだましに誤魔化した風邪の影響かもしれない。