早河シリーズ第四幕【紫陽花】
二人は最上階のラウンジに入る。ラウンジには他の撮影スタッフや役者も数名いた。
「お天気が残念ですね。晴れていたらいい眺めなのに」
「今日も夜は雨が降るみたいだからね」
なぎさと乃愛は窓際の席に落ち着いた。相変わらず食欲のないなぎさはミルクティーを、乃愛はカフェラテといちごパフェを注文した。
「秋山さんは玲夏さんとは付き人になる以前からのお知り合いなんですか?」
「え?」
「最近付き人になったにしては玲夏さんと仲良しだなぁって思って」
「……うん、まぁね。玲夏さんとは前から親しくさせてもらってるの」
なぎさは玲夏とは今回の調査依頼が初対面だ。当然、以前からの交流はない。
親しいように見えるのは、依頼人と探偵の助手という裏の関係性が絡んでいるからではあるが、それを乃愛に言うこともできない。
(玲夏さんがかなり気を遣って私の仕事がしやすいようにしてくれているのよね)
なぎさのミルクティーと乃愛のカフェラテが運ばれてくる。乃愛のカフェラテには猫のラテアートが施されていた。
「わぁ! 可愛い!」
乃愛は携帯電話のカメラをカフェラテに向けて写真を撮っている。
「ブログに載せよっ」
「乃愛ちゃんブログやってるの?」
「はい。乃愛の好きなものが知れて嬉しいってファンの人達がコメントくれるんです。ヘッダー画像は乃愛のわんちゃんなの」
乃愛はピンク色のラインストーンでキラキラにデコレーションされた携帯の画面をなぎさに向けた。
〈Noaのいちごdays〉と題されたブログのヘッダー画像はぬいぐるみのような茶色い犬を抱いた乃愛の写真だった。
「可愛いね。トイプードル?」
「そうです。チョコラって名前で、1歳の女の子なの」
愛犬の話をする乃愛はとても楽しそうだ。撮影現場では一人称を私と言う乃愛もプライベートでは自分を名前で呼ぶ癖がある。
それはまだ19歳の彼女だから許されることだ。
(一ノ瀬さんには乃愛ちゃんは裏表あるから注意しろって言われたし、所長にも矢野さんにも玲夏さん以外の人には警戒した方がいいとも言われているけど……)
「お天気が残念ですね。晴れていたらいい眺めなのに」
「今日も夜は雨が降るみたいだからね」
なぎさと乃愛は窓際の席に落ち着いた。相変わらず食欲のないなぎさはミルクティーを、乃愛はカフェラテといちごパフェを注文した。
「秋山さんは玲夏さんとは付き人になる以前からのお知り合いなんですか?」
「え?」
「最近付き人になったにしては玲夏さんと仲良しだなぁって思って」
「……うん、まぁね。玲夏さんとは前から親しくさせてもらってるの」
なぎさは玲夏とは今回の調査依頼が初対面だ。当然、以前からの交流はない。
親しいように見えるのは、依頼人と探偵の助手という裏の関係性が絡んでいるからではあるが、それを乃愛に言うこともできない。
(玲夏さんがかなり気を遣って私の仕事がしやすいようにしてくれているのよね)
なぎさのミルクティーと乃愛のカフェラテが運ばれてくる。乃愛のカフェラテには猫のラテアートが施されていた。
「わぁ! 可愛い!」
乃愛は携帯電話のカメラをカフェラテに向けて写真を撮っている。
「ブログに載せよっ」
「乃愛ちゃんブログやってるの?」
「はい。乃愛の好きなものが知れて嬉しいってファンの人達がコメントくれるんです。ヘッダー画像は乃愛のわんちゃんなの」
乃愛はピンク色のラインストーンでキラキラにデコレーションされた携帯の画面をなぎさに向けた。
〈Noaのいちごdays〉と題されたブログのヘッダー画像はぬいぐるみのような茶色い犬を抱いた乃愛の写真だった。
「可愛いね。トイプードル?」
「そうです。チョコラって名前で、1歳の女の子なの」
愛犬の話をする乃愛はとても楽しそうだ。撮影現場では一人称を私と言う乃愛もプライベートでは自分を名前で呼ぶ癖がある。
それはまだ19歳の彼女だから許されることだ。
(一ノ瀬さんには乃愛ちゃんは裏表あるから注意しろって言われたし、所長にも矢野さんにも玲夏さん以外の人には警戒した方がいいとも言われているけど……)