早河シリーズ第四幕【紫陽花】
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 6:30 朝食準備終了
 犯人A(平井?)
 一ノ瀬蓮の湯呑みに毒を入れる
 平井、フロントへ
 ↓

 宴会場無人(10分間)

 犯人B(Aの共犯者?)
 一ノ瀬蓮と平井の湯呑みをすり替える
 毒入りの湯呑みは平井の席に
 2つの湯呑みの指紋を拭き取る
 ↓
 6:40 平井、宴会場に戻る

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『犯人Bは平井さんを殺した奴だけど、俺としてはBに命を救われたのか』
「もし平井さんが犯人AならBは平井さんを殺そうとしていたのよね。Bは平井さんを恨んでいたのかしら」

メモを見た蓮と玲夏が口々に言う。二人の意見に矢野も頷いた。

『憶測の域を脱しませんが、平井さんが他殺の線は濃くなりましたよね。警察が湯呑みの指紋をどう判断しているかはわかりません。自殺として片付けようとしているのならあまり気にしていないかも』
『一輝から警察に言ってやれば?』
『やー。それが言えないんですよねぇ。このネタ集めるために少々手荒なことしたので。俺が湯呑みの指紋のことを知っていると警察にバレるのはまずいんです』

矢野は陽気に笑っていた。

 なぎさにはいつも疑問だった。矢野は毎回どのような手段で情報を集めてくるのだろう。

場合によっては犯罪まがいの行為もしているようだがそれは早河も同じ。
なぎさが知らない早河と矢野の裏の顔がある。

 どれだけ長い時間を共にしても、どれだけ相手のことをわかった気でいても、相手のすべての顔を知るのはきっと無理なのだ。

         *

 玲夏の部屋に助監督から撮影続行と再開の電話連絡が来たのはそれから数分後だった。
撮影は14時から再開される。遅れた分の撮影はまた日程を調整して撮影をし、予定通り明日東京に戻るスケジュールで本決まりとなった。


第三章 END
→第四章 雷雨、ところにより陰謀 に続く
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