早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
 キャンプ場に隣接する駐車場に戻った柴田はカメラのデータを眺めてほくそ笑んだ。

 カメラのデータフォルダにはバーベキューや川遊びをする美月、夕食を作る美月、今日ここに来てからの美月を隠し撮りした写真で埋まっている。

大学に居る時には撮れない美月の写真がたくさん撮れた。川遊びで濡れた美月の白い脚が綺麗に写っている。

 気に入らないのは、美月の彼氏と思われるあの男だ。あの男は当然のように美月に触れている。柴田が触りたくても触れない美月に触れている。

それに加えて他の4人の男達。美月とどんな関係か知らないが、彼らも気軽に美月と話していた。気に入らない。

 美月が明鏡大学に入学した時から目を付けていた。柴田が担当する講義の学生名簿に美月の名前を発見した時はこれが運命の出会いだと思った。あの子こそ、運命の相手だ。

いつか、絶対に手に入れる。服従する美月を見てみたい。美月を手に入れるその時が楽しみだ。

 携帯にメールが届いた。教え子の明日香だ。柴田は明日香には何の魅力も感じられなかった。言い寄って来たから相手をしてやっているだけ。

可憐な美月に比べて、派手な下着を身に付ける明日香は汚らわしく見えて好みではない。

 明日香にはゴールデンウィークは学会で大阪に行っていると嘘をついた。連休は四六時中、美月に張り付ける絶好の機会。誰にも邪魔されてなるものか。

 明日香への返信を後回しにして柴田は車のエンジンをかける。
本音はここに泊まりたいが、男ひとりでキャンプ場の施設を借りれば不審がられる。しかし都内に帰ればどこかで明日香と鉢合わせしてしまうかもしれない。それだけは避けたい。
明日香の束縛の強さには柴田もほとほと疲れていた。

 迷った挙げ句、柴田は車のナビであきる野市内のビジネスホテルの検索を始めた。
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