早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
『あっ、早河さーん』
窃盗が起きたと通報を受けた派出所の朝田《あさだ》巡査と守山《もりやま》巡査が駆けつけてくる。
通行人の男性数名に取り押さえられている男を早河は顎で指した。
『こいつ、窃盗と銃刀法違反の現行犯な』
『早河さんが捕まえたんですね! さっすが元刑事』
守山巡査が男に手錠をかけた。被害者の確認を終えた朝田巡査が早河に向き直る。
『早河さんも祭りにいらしていたんですか? おひとりで祭りのパトロールに?』
『ひとりって言うか……』
「早河さん!」
どこかに隠れて様子を窺っていた有紗が物凄い勢いで早河に抱き付いた。
「あの泥棒、ナイフ持ってたでしょ? どこも怪我してない? 大丈夫?」
早口でまくしたてる有紗の登場に、朝田巡査も守山巡査も、窃盗の被害者の男性も女性も窃盗犯でさえも、唖然としている。
『俺は元刑事だぞ。泥棒ごときに俺が負けると思うか?』
「ううん。早河さんは強いもん。だから大丈夫って思ってたけどぉ……でもやっぱり早河さんがナイフ向けられてるの見るのは怖かったよぉ……」
早河は泣き出してしまった有紗の背中を撫でてあやした。守山巡査が恐る恐る二人に近付く。
『あの、早河さん。その子は?』
『ああ、姪っ子みたいなもので……』
「早河さんみたいなおじさんいらないっ! 姪じゃなくて彼女にしてよ! 私はこんなに早河さんが好きなのにぃ!」
早河の答えが不服だった有紗は涙を流していても元気に反論して、どさくさ紛れに告白までしている。早河は溜息をついて肩を落とした。
『ははぁ。なるほど。若い彼女さんができましたねぇ』
『早河さんもやりますねぇ。こんな若い女の子をいつの間に口説いていたんですか?』
ニヤニヤと笑う朝田と守山、野次馬根性丸出しの周りの視線が痛い。
『だから誤解。この子とは別に変な関係じゃねぇから……』
『いえいえ、ご心配なく。助手さんには黙っておきますよ』
『は? 助手って……』
『早河さんも浮気するんですねぇ。いや、わかります。わかりますよぉ。早河さんも普通の男だったんですね。なんか安心しました』
小声で囁く朝田巡査と守山巡査に早河は舌打ちしてみせた。
窃盗犯を朝田達に引き渡した早河は有紗を連れて探偵事務所に戻る道を歩く。
窃盗が起きたと通報を受けた派出所の朝田《あさだ》巡査と守山《もりやま》巡査が駆けつけてくる。
通行人の男性数名に取り押さえられている男を早河は顎で指した。
『こいつ、窃盗と銃刀法違反の現行犯な』
『早河さんが捕まえたんですね! さっすが元刑事』
守山巡査が男に手錠をかけた。被害者の確認を終えた朝田巡査が早河に向き直る。
『早河さんも祭りにいらしていたんですか? おひとりで祭りのパトロールに?』
『ひとりって言うか……』
「早河さん!」
どこかに隠れて様子を窺っていた有紗が物凄い勢いで早河に抱き付いた。
「あの泥棒、ナイフ持ってたでしょ? どこも怪我してない? 大丈夫?」
早口でまくしたてる有紗の登場に、朝田巡査も守山巡査も、窃盗の被害者の男性も女性も窃盗犯でさえも、唖然としている。
『俺は元刑事だぞ。泥棒ごときに俺が負けると思うか?』
「ううん。早河さんは強いもん。だから大丈夫って思ってたけどぉ……でもやっぱり早河さんがナイフ向けられてるの見るのは怖かったよぉ……」
早河は泣き出してしまった有紗の背中を撫でてあやした。守山巡査が恐る恐る二人に近付く。
『あの、早河さん。その子は?』
『ああ、姪っ子みたいなもので……』
「早河さんみたいなおじさんいらないっ! 姪じゃなくて彼女にしてよ! 私はこんなに早河さんが好きなのにぃ!」
早河の答えが不服だった有紗は涙を流していても元気に反論して、どさくさ紛れに告白までしている。早河は溜息をついて肩を落とした。
『ははぁ。なるほど。若い彼女さんができましたねぇ』
『早河さんもやりますねぇ。こんな若い女の子をいつの間に口説いていたんですか?』
ニヤニヤと笑う朝田と守山、野次馬根性丸出しの周りの視線が痛い。
『だから誤解。この子とは別に変な関係じゃねぇから……』
『いえいえ、ご心配なく。助手さんには黙っておきますよ』
『は? 助手って……』
『早河さんも浮気するんですねぇ。いや、わかります。わかりますよぉ。早河さんも普通の男だったんですね。なんか安心しました』
小声で囁く朝田巡査と守山巡査に早河は舌打ちしてみせた。
窃盗犯を朝田達に引き渡した早河は有紗を連れて探偵事務所に戻る道を歩く。