早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
太陽が茜色に染まりだした夕刻、明日香は原宿駅前のカフェに入った。注文したドリンクを持って窓際のカウンター席に座り、携帯電話を弄る。
しばらくして明日香と同じ茶髪のロングヘアーの女が隣に座った。同じ髪色に同じ長さの髪の女が二人並ぶ光景はなかなか滑稽だ。
「エクステ似合ってるじゃない」
「そうですか? ここまで長いの久しぶりだから落ち着かなくて」
明日香はエクステの人工的な質感の毛先を指に絡めた。このエクステをつけたのは3日前の5月26日。
「大好きな先生がいなくなった感想は?」
「思ってたよりは悲しくなくて、むしろスッキリしています。先生は裏切り者だから、私を裏切った先生はもういらない」
隣の女は笑っていた。女は今流行りのカーキ色のサルエルパンツを履いている。どこのブランドの物だろうと明日香は気になった。
「切り替え早いわねぇ。じゃあ浅丘美月のことはもういいの?」
「それはまだ。まだ足りない。先生のことはどうでもいいけど、浅丘美月は……あの子は苦しめてやらないと気が済まない」
「怖い子ね。……カード返しておくわね」
女はテーブルの上をスライドさせるようにカードを明日香の前に置いた。明日香がよく利用するレンタルDVD店の会員カードだ。
明日香は無言でカードを受け取り、財布に戻す。
サングラスの女が席を立った。女が注文した飲み物は一口も減らず、グラスの中で炭酸の泡が踊っている。
「ここから先は私に任せなさい。あとこれ、コーラだけど私は飲んでいないから。飲めたら飲んでいいわよ」
「アゲハさん。あなたは浅丘美月にどんな恨みが?」
アゲハと呼ばれた女の口元が斜めに上がった。サングラス越しの彼女の目は笑っていない。
「私もあなたと同じなのよ」
それだけ言ってアゲハは店を去った。
明日香はアゲハの注文したコーラを飲みながら彼女が残した言葉の意味を考えていた。
しばらくして明日香と同じ茶髪のロングヘアーの女が隣に座った。同じ髪色に同じ長さの髪の女が二人並ぶ光景はなかなか滑稽だ。
「エクステ似合ってるじゃない」
「そうですか? ここまで長いの久しぶりだから落ち着かなくて」
明日香はエクステの人工的な質感の毛先を指に絡めた。このエクステをつけたのは3日前の5月26日。
「大好きな先生がいなくなった感想は?」
「思ってたよりは悲しくなくて、むしろスッキリしています。先生は裏切り者だから、私を裏切った先生はもういらない」
隣の女は笑っていた。女は今流行りのカーキ色のサルエルパンツを履いている。どこのブランドの物だろうと明日香は気になった。
「切り替え早いわねぇ。じゃあ浅丘美月のことはもういいの?」
「それはまだ。まだ足りない。先生のことはどうでもいいけど、浅丘美月は……あの子は苦しめてやらないと気が済まない」
「怖い子ね。……カード返しておくわね」
女はテーブルの上をスライドさせるようにカードを明日香の前に置いた。明日香がよく利用するレンタルDVD店の会員カードだ。
明日香は無言でカードを受け取り、財布に戻す。
サングラスの女が席を立った。女が注文した飲み物は一口も減らず、グラスの中で炭酸の泡が踊っている。
「ここから先は私に任せなさい。あとこれ、コーラだけど私は飲んでいないから。飲めたら飲んでいいわよ」
「アゲハさん。あなたは浅丘美月にどんな恨みが?」
アゲハと呼ばれた女の口元が斜めに上がった。サングラス越しの彼女の目は笑っていない。
「私もあなたと同じなのよ」
それだけ言ってアゲハは店を去った。
明日香はアゲハの注文したコーラを飲みながら彼女が残した言葉の意味を考えていた。