早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
警視庁捜査一課のフロアで上野恭一郎はホワイトボードを睨み付けていた。ボードには柴田准教授殺人事件の詳細が書き込まれている。
『なぁ、原。殺人の容疑をかけたい人間がいるならその人間のアリバイが成立しない時を狙って犯行を行うよな?』
『普通はそうですよね。アリバイが証明されれば被疑者からは外れますから』
原の言葉に上野は頷き、ペンでホワイトボードに貼られた柴田の写真を指した。
『しかし柴田の携帯をハッキングして偽装メールを作ってまで柴田と浅丘美月の関係を匂わせ、彼女のリップクリームを現場に残したわりには柴田の死亡推定時刻の浅丘美月のアリバイは証明されている。矛盾していないか?』
犯行日の5月28日は美月は午後3時に大学の授業を終え、午後4時から目黒駅の本屋でアルバイトを開始している。
柴田の死亡推定時刻である4時には美月は書店の店舗にいたことが証明され、アリバイは成立。
『チェーンメールの件もありますし、本来の目的は浅丘美月への嫌がらせのようにも思えますね』
『だろ? ホシの真の狙いは彼女を苦しめることにある……小山、さっきから何してるんだ?』
上野はデスクのパソコンに向かう真紀に声をかける。真紀はカップラーメンをすすりながら食い入るようにパソコンを見ていた。
「少し気になる人物がいて。今、その人物のブログを見ているんです」
『気になる人物?』
「柴田の教え子の南明日香。美月ちゃんと同級生なんですが、美月ちゃんに対してやけに攻撃的だったのが気になって」
真紀は食べ終えたとんこつラーメンのカップをデスクに置いてマウスを動かした。上野と原が彼女のデスクの周りに集まる。
『美月ちゃんに攻撃的と言うのは?』
「私が柴田のゼミ生を集めて聴取をした時に、美月ちゃんを名指しして彼女が柴田に気に入られていたと発言したんです。美月ちゃん本人は明日香のことは同級生としか認識していない様子でしたので、明日香が一方的に美月ちゃんに敵意を抱いているみたいでしたね」
『浅丘美月は可愛いからなぁ。可愛い女は本人に身に覚えがなくても妬まれる。女の世界は怖い怖い』
男性の原が女の世界を語るのは奇妙な気もするが、彼の意見には真紀も概《おおむね》ね同意だった。
『なぁ、原。殺人の容疑をかけたい人間がいるならその人間のアリバイが成立しない時を狙って犯行を行うよな?』
『普通はそうですよね。アリバイが証明されれば被疑者からは外れますから』
原の言葉に上野は頷き、ペンでホワイトボードに貼られた柴田の写真を指した。
『しかし柴田の携帯をハッキングして偽装メールを作ってまで柴田と浅丘美月の関係を匂わせ、彼女のリップクリームを現場に残したわりには柴田の死亡推定時刻の浅丘美月のアリバイは証明されている。矛盾していないか?』
犯行日の5月28日は美月は午後3時に大学の授業を終え、午後4時から目黒駅の本屋でアルバイトを開始している。
柴田の死亡推定時刻である4時には美月は書店の店舗にいたことが証明され、アリバイは成立。
『チェーンメールの件もありますし、本来の目的は浅丘美月への嫌がらせのようにも思えますね』
『だろ? ホシの真の狙いは彼女を苦しめることにある……小山、さっきから何してるんだ?』
上野はデスクのパソコンに向かう真紀に声をかける。真紀はカップラーメンをすすりながら食い入るようにパソコンを見ていた。
「少し気になる人物がいて。今、その人物のブログを見ているんです」
『気になる人物?』
「柴田の教え子の南明日香。美月ちゃんと同級生なんですが、美月ちゃんに対してやけに攻撃的だったのが気になって」
真紀は食べ終えたとんこつラーメンのカップをデスクに置いてマウスを動かした。上野と原が彼女のデスクの周りに集まる。
『美月ちゃんに攻撃的と言うのは?』
「私が柴田のゼミ生を集めて聴取をした時に、美月ちゃんを名指しして彼女が柴田に気に入られていたと発言したんです。美月ちゃん本人は明日香のことは同級生としか認識していない様子でしたので、明日香が一方的に美月ちゃんに敵意を抱いているみたいでしたね」
『浅丘美月は可愛いからなぁ。可愛い女は本人に身に覚えがなくても妬まれる。女の世界は怖い怖い』
男性の原が女の世界を語るのは奇妙な気もするが、彼の意見には真紀も概《おおむね》ね同意だった。