早河シリーズ第五幕【揚羽蝶】
京王電鉄井の頭線、高井戸駅の近くに柴田准教授が住むマンションがある。明日香は通い慣れた柴田の部屋のベッドで彼と甘いひとときを過ごしていた。
「先生、ゴールデンウィーク何してる?」
『仕事。大阪出張が入ってる』
「なぁんだ。どこかに連れて行ってもらおうと思ったのに」
半裸で寝そべる柴田の上に跨がって彼女は自分から柴田にキスをした。軽めのキスを数回繰り返して唇を離す。
『遊びに行きたいなら他の男に連れて行ってもらえよ。明日香なら男はいくらでもいるだろ?』
「もぅ。そんなこと言ってるとホントに浮気して先生なんてポイ捨てしちゃうからねっ?」
明日香が苦笑いする柴田の頬をつねる。柴田は笑っていた。明日香の言葉など彼は本気にはしていない。
明日香程度の付き合いの女は掃いて捨てるほどいる。明日香が柴田を捨てたところで彼は涙も流さないだろう。
(先生は何もわかってない。私にとって先生は特別なのよ)
柴田がシャワーを浴びに浴室へ向かい、部屋にひとりになった明日香は手持ちぶさたに携帯電話のアドレス帳を開いた。
(ゴールデンウィーク遊んでくれる人いないかなー)
アドレス帳に並ぶのは男の名前だけ。女の名前はひとつもない。小学校も中学校も高校も、明日香に同性の友達はいなかった。
大学に入っても女の友達は必要ないから作らない。同性の友達ができないとは思いたくなかった。
そう、“できない”じゃない。“作らない”のだ。
男はみんなチヤホヤしてくれる。だから好き。女はみんなチヤホヤしてくれない。だから嫌い。
女がチヤホヤするのは浅丘美月のような女だけ。だから嫌い。
同性の友達はいらない。チヤホヤしてくれない人間はいらない。
(暇だなー。ブログ用の写真でも撮ろう)
髪を整えて化粧を直し、携帯電話のカメラに向けて“一番可愛いわたし”の顔を造る。
黒のベビードールの肩紐をわざと外して、精一杯寄せた胸の谷間が少しだけ写り込む角度でカメラを連写した。
一番気に入った写真をブログの作成画面に貼り付けてブログを更新する。すぐに反応が返ってきた。
ブログのコメント欄には〈可愛い、付き合いたい、会いたい〉明日香の容姿を称賛するコメントで溢れている。
誰も彼もが会ったことのないネットの向こうの男ばかりだ。明日香はこの瞬間がたまらなく快感だった。
「先生、ゴールデンウィーク何してる?」
『仕事。大阪出張が入ってる』
「なぁんだ。どこかに連れて行ってもらおうと思ったのに」
半裸で寝そべる柴田の上に跨がって彼女は自分から柴田にキスをした。軽めのキスを数回繰り返して唇を離す。
『遊びに行きたいなら他の男に連れて行ってもらえよ。明日香なら男はいくらでもいるだろ?』
「もぅ。そんなこと言ってるとホントに浮気して先生なんてポイ捨てしちゃうからねっ?」
明日香が苦笑いする柴田の頬をつねる。柴田は笑っていた。明日香の言葉など彼は本気にはしていない。
明日香程度の付き合いの女は掃いて捨てるほどいる。明日香が柴田を捨てたところで彼は涙も流さないだろう。
(先生は何もわかってない。私にとって先生は特別なのよ)
柴田がシャワーを浴びに浴室へ向かい、部屋にひとりになった明日香は手持ちぶさたに携帯電話のアドレス帳を開いた。
(ゴールデンウィーク遊んでくれる人いないかなー)
アドレス帳に並ぶのは男の名前だけ。女の名前はひとつもない。小学校も中学校も高校も、明日香に同性の友達はいなかった。
大学に入っても女の友達は必要ないから作らない。同性の友達ができないとは思いたくなかった。
そう、“できない”じゃない。“作らない”のだ。
男はみんなチヤホヤしてくれる。だから好き。女はみんなチヤホヤしてくれない。だから嫌い。
女がチヤホヤするのは浅丘美月のような女だけ。だから嫌い。
同性の友達はいらない。チヤホヤしてくれない人間はいらない。
(暇だなー。ブログ用の写真でも撮ろう)
髪を整えて化粧を直し、携帯電話のカメラに向けて“一番可愛いわたし”の顔を造る。
黒のベビードールの肩紐をわざと外して、精一杯寄せた胸の谷間が少しだけ写り込む角度でカメラを連写した。
一番気に入った写真をブログの作成画面に貼り付けてブログを更新する。すぐに反応が返ってきた。
ブログのコメント欄には〈可愛い、付き合いたい、会いたい〉明日香の容姿を称賛するコメントで溢れている。
誰も彼もが会ったことのないネットの向こうの男ばかりだ。明日香はこの瞬間がたまらなく快感だった。