一ノ瀬さん家の恋愛事情。
もしかして優ちゃん、いい慣れてるのかな、なんて思っちゃうこともある。

「すみませーん、写真撮りたいんですけど、お願いできますか?」

ペンギンの水槽の前で声をかけてきたのは同い年くらいの女の子三人組。

その中でも携帯を差し出してきた子はとてもおしゃれで、大人っぽい黒のワンピースが似合っている。

目の前にいる私をスルーして優ちゃんに渡されるカメラ。

まるで私なんていないかのように優ちゃんにさりげなーくボディタッチ。

「かっこいいですねー、アイドルみたい!」

「何歳ですか?」

胸の中に何かもやもやした雲みたいなものがかかっていく。

これはきっと、嫉妬ってやつだ。

「優ちゃん、私トイレ行ってくるね!」

その場にいるのが嫌で、見難い自分の心が嫌で、その場から逃げ出した。

トイレの鏡をのぞき込むと、そこには見慣れた自分の姿。

チビだし、色気なんて皆無だし、今日だって自分なりにおしゃれしてきたつもりだけど…
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