一ノ瀬さん家の恋愛事情。

「行かなくていいの？」

俺がそういうと秋山さんはハッとして声を上げた。

「行かなきゃ！じゃあまた明日ね、一ノ瀬君！」

「うん、ばいばい。」

バタバタと走っていったその後ろ姿を見る。

背筋、伸びてる。

その方がいい。

秋山さんは身長が高いことを気にしているらしくいつも少し猫背気味。

だけど凛として背筋を伸ばしてた方がいい。


家に帰るとリビングには誰もいなかった。

前までは俺が帰ると誰か必ずいて、おかえりって言ってくれてたのに。

この家に来てからだ。

ただいま、おかえりって言葉の大切さを知ったのは。

電気の付いていないリビングはとても広く感じる。

冷蔵庫横のホワイトボードを見ると律兄は説明会、優兄は留学の集まり、でいないらしい。

てことは…

「れーい兄！」

「…なに、ノックしてよ、」

しました！

ノックしたのに音楽聴いてるから気づいてくれなかったんじゃん！