一ノ瀬さん家の恋愛事情。
この家に暮らし始めて一年も経っていないのに俺はみんなといることがすごく楽しい。

ずっとここでこうしてみんなで暮らしていきたい。

けどそう現実は甘くなくて。

みんなそれぞれ自分の進む道を決めてこの家から離れていく。

俺はまだ子供で、なにもできないからそれがたまに歯がゆく感じることもある。

「で、なんか用?」

「漫画貸して!オススメのやつ!」

「最近買ってない。その辺にあるの適当に読んでよ。」

…つまんない。

前まではオススメ教えて!っていうとめんどくさそうにもちゃんと教えてくれたのに。

けどこれ以上勉強の邪魔をしたら玲兄の無言の怒りを買いそうなので俺は適当に一冊本棚から抜くと部屋を出た。

高校生活も楽しいけど、なんだかな。

部活だって勉強だって俺には一生懸命になれることがあるはずなのに。

それなのにどうして俺はそうなれないんだろう。

自分のことに一生懸命にそればっかりに熱中できないんだろう。
< 164 / 248 >

この作品をシェア

pagetop