一ノ瀬さん家の恋愛事情。
このまま、夏川と付き合えば楽しいのかな。

だって今すごく苦しいから。

楽しい恋愛したいよ、あたし。

初恋だもん。

一ノ瀬君が好き。

「咲耶?」

「夏川、ごめんね!あたし行かなきゃ…」

まだ間に合うかな。

ちゃんと素直に言わなくちゃ。

教室まで戻ると息切れをしていた。

落ち着いて、深呼吸。

扉を開けるともう誰もいなかった。

遅かった…

勇気を出すのが遅かった。

「秋山さん?」

「…あ、」

これはもう、チャンスだ。

「もう帰ったのかと思った、どうしたの?」

言うんだ、素直に。

ここで終わりたくないから。

あたしはその綺麗な宝石みたいな目に吸い込まれないように足元に力をぐっと入れる。

「あたし、お祭り…行けない。」

「…そっか、そうだよな、突然誘ってごめんね。」

一ノ瀬君が困ったみたいに笑う。

違う、行けないじゃなくて、本当は…
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