一ノ瀬さん家の恋愛事情。
流行りの曲は知ってるつもりなんだけど、何が好き!とかいうのはないんだよね。

私ってつくづく面白くないなあ…

「あっ、はじまる!」

静かなギターの音色から始まったバラード。

賑やかなお祭りのステージが水を打ったように静かになる。

それはその人の声にきっと聞き惚れたから。

スッと胸にささるようなまっすぐな澄んだ声。

なのに力強くて、言葉一つ一つがくっきり形になってる。

一曲目はあっという間に終わって、すぐに大きな歓声に包まれた。

「はー!やっぱり晴世さんの声すげえ。」

一ノ瀬君も興奮したように言う。

ボーカルの女の人はあたしより少し年上なのかな?

幼い感じだけどすごくかわいい。

「こんばんはー!Cielでーす!」

ギターを持った金髪の人が言うと今度はドラムがアップテンポなビートを奏で始め、ロックな感じの曲が始まった。

そのあと三曲ほど演奏し終え、Cielは鳴り止まない拍手の中惜しまれつつ帰っていった。

「すごいかっこよかった!」
< 199 / 248 >

この作品をシェア

pagetop