一ノ瀬さん家の恋愛事情。
今、この空間にはわたしと一ノ瀬君しかいない。

どうしよう、好きって気持ちが溢れちゃいそうだよ。

だから気をそらすために、窓からの景色を見る。

「わあ…綺麗。」

街や建物がまるでおもちゃみたいに小さい。

普段私達はあそこで生活してるんだよね。

なんだか不思議。

「…綾瀬さん、」

窓の外を見ていると、一ノ瀬君が私を呼んだ。

振り返ると、顔を赤くしてわたしを見ている一ノ瀬君。

ドキドキ、ドキドキ。

この鼓動、聞こえてないかな。

聞こえて、ないよね…

聞こえてたら、好きってばれちゃうもん…

「綾瀬さん、好きです。」

「へ?」

一瞬、私の世界は時が止まった。

一ノ瀬君の顔がぼんやりしてくる。

今、いまなんて言ったの?

「会ったばっかりで、しかも俺、彼女いたことなくて、恋愛だってしたことないし…」

恥ずかしそうに、でもわたしをまっすぐ見つめる彼の目も、少しゆらゆら揺れている。
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