一ノ瀬さん家の恋愛事情。
世界で一番きれいな君が

side咲耶

新学期初日は朝から雨が降っていた。

ジメジメするし、髪は跳ねるし、課題テストは難しかったし、気分は最悪だ。

蒸し風呂みたいな体育館をやっとでて、ホームルームが終われば今日は終わりだ。

「ねえねえ!今日うちのクラスに転校生来るらしいよ!」

相変わらず噂好きのくるみ。

「ふーん…」

この時期に転校生かぁ。

「もう!咲耶ってば元気ない!夏休み終わったからってだらけてちゃだめだよ!」

くるみはなんだかイキイキしてる。

もしかして…

「川上君となにかあったの?」

「えっ?…あ、…べ、別に!」

…こりゃあったな…

普段はツンツンしてるけどこういうとこ、かわいいよね。

「くるみ!」

あ、噂をすれば…

「ちょっと!くるみって呼ばないで!」

「えっ!あっ、ごめん!」

「…放課後、図書室で待ってる。」

「はい!」

あー、ラブラブだ。

いいなぁ。

あたしはというと、あのお祭りの日以来一ノ瀬君とは話せずじまい。

ラインだってクラスラインのグループから追加することはできたのに、怖くて何もできなかった。
< 211 / 248 >

この作品をシェア

pagetop