一ノ瀬さん家の恋愛事情。
なんでかな。

私、この人ともっと話してみたい。

こんなこと思ったの、はじめてだ。

なんでだろう、おかしいのかな。

「あの、俺も一緒に帰っていいですか?…やっぱりこういう場、苦手だってたった一時間でわかったんで…」

そんなことをボーッと考えてたら、思わぬ彼からの言葉に、特に考えなしに頷いていて。

「じゃあ、行きましょうか。多分先に帰るって言ったら引き止められてうるさいから、このまま抜け出しましょう。」

「えっ…でも…」

「後でメールしとけば大丈夫。」

そう言って笑った一ノ瀬君に、本当に大丈夫な気がしたの。

二人で外に出ると、春とはいえ少し肌寒い。

もう十時前だけど、今日が土曜だからか街はまだまだ明るくて。

「えっと、まだ名前聞いてませんでしたよね。」

はっ!

そうだ、まだ名前すら言っていなかったんだ。

「綾瀬ひなのです、文学部の一年生です。ちなみに私も高校まで剣道部に入ってました。」
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