婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
 彼女は顔を歪めると、彼女の瞳に涙が溜まっていく。

「私、今まで……カタル様に無神経なことしていました……」

 そう言い切ると、大きな目から涙が溢れる。
 ぽろぽろとこぼれる涙は、綺麗な色をしていた。

「何も知らないとはいえ、アッシュに歩み寄ってほしいなんて……。ごめんなさい」
「君は何も悪くない。悪いのは、父親になると決めたのに、なりきれていない私のほうだ」

 彼女は何度も頭を横に振る。甘そうなストロベリーブロンドの髪が左右に揺れた。

「これ以上、一人で背負わないでください! アッシュは私が、二人分。ううん、三人分でも四人分でも愛情を掛けて育てます。だから……安心してください」

 シャルロッテが涙をこぼしながら笑う。
 忙しい人だ。笑うか泣くかどちらかにすればいいのに。
 しかし、今まで胸に渦巻いていた、もやのようなものが晴れていくような不思議な感覚を感じた。
 カタルは思わず、シャルロッテを抱きしめた。

「えっ!? カタル様っ!?」
「悪い。少しだけ……」

 カタルはシャルロッテの肩に顔を埋める。声が震えた。言い訳は思いつかなかった。
 シャルロッテの手がゆっくりカタルの背を撫でる。
 優しい手だ。他人の手をこんなにも優しいと感じたことはなかった。
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