婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~

第八章 もふもふのある幸せ

 その日、シャルロッテは夜が明けても眠ることができなかった。
 カタルの告白が何度も頭を過る。

(兄と妻の不貞の子か……)

 カタルは兄と妻の両方に裏切られたと言うことだ。『冷酷悪魔』と呼ばれた裏にそんな物語が隠れていたなんて、想像できただろうか。
 シャルロッテは今までしてきたことの数々を思い出し、頭を抱えた。
 事情があると言っていたオリバーの言葉をもっと真剣に聞いていれば、もう少し違う対応ができたのではないか。

(全部責任背負って悪者になるなんて、いい人過ぎるでしょ……)

 元はと言えば、クロエが不貞を働かなければよかったのだ。いいや、皇帝を愛していたのであれば、カタルと結婚しなければよかった。
 そうすれば、少なくとも子どものことでカタルは傷つかなかったのだから。
 胸が苦しい。
 昨夜のカタルは今まで見た中で一番辛そうだった。

(そりゃあそうよね。兄と妻に裏切られた上に、自ら悪者になって、新しくできた婚約者には父親を強要されて。ああ……! 私って本当最低っ……!)

 できることなら、最初からやり直したい。
 アッシュとだけ向き合い、カタルとはビジネスパートナーのように接していれば、あんな苦しませることにはならなかったかもしれない。
 シャルロッテに身体を預けていたときのカタルは、わずかに震えていた。泣いてはいなかった。しかし、涙を堪えていたのかもしれない。
 背負ってきたものが大きすぎたのだ。

(私にできることなんて、肩を貸すくらいだったもん……)
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