婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
 晩餐まで待てば会えるというのに。

(やっぱりあとにしよう!)

 扉の前を散々うろうろしたあげく、シャルロッテは扉に背を向けた。それと同時に扉が開く。

「さっきから何をしている?」
「カ、カタル様……! いつから気づいて……」
「君が廊下を歩いているときから」

(ああ……そっか。耳がいいんだっけ!?)

 つまり、シャルロッテの葛藤をずっと聞いていたということだ。

「気づいたなら、すぐに開けてくれればいいのに!」
「いや、悩んでいるようだったから、つい」

 カタルはわずかに笑って言った。そんな風に笑ったのを初めて見るような気がして、シャルロッテは目を見開く。

「どうした? 何か用があるんだろう?」
「はい! 時間があったらでいいのですが、昨日の話の続きをしたくて……」

 シャルロッテの声が尻すぼみに小さくなる。カタルにとってはあまり楽しい話ではない。きっと断られるだろう。
 しかし、カタルは小さく息を吐いたあと、「入れ」と言った。

「いいんですか?」
「昨日は中途半端なところで話を終わらせてしまったからな」

 シャルロッテはカタルに促されるまま、執務室へと足を踏み入れた。
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