婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
その先導者が皇族だった。その皇族が獣人であることはどんな本にも書かれていなかった。きっと、この事実が露見すれば、ニカーナ帝国は混乱するだろう。
シャルロッテは頭を横に振る。
(絶対誰にも言わないから大丈夫!)
シャルロッテは表紙の狼を見て、眉尻を下げた。表紙に描かれた狼の頭を優しくなぞる。
(きっと、寂しかっただろうな……)
この狼にだって家族はいたはずだ。愛する人のために、すべてを捨てて海を渡る。それはどれほど怖いことだっただろうか。
そして、愛する人のために狼だった記憶すら奪い、狼は本当の意味で孤独になったはずだ。
今は皇族の数も多いため、一人で苦しみを抱える必要はないのかもしれない。けれど、彼らは常に孤独と戦っている。結婚相手にすら本当のことを言えないなんて。
(私も、元婚約者に夢を打ち明けるかすごく悩んだもんなぁ~)
シャルロッテは「こんなに私のことを想ってくれている彼なら、私の趣味を受け入れてくれるかもしれない」と、何度も自問自答した。やはり、シャルロッテも理解されたかったのだ。
たった一人でいい。生涯シャルロッテを理解してくれる人と出会いたかった。たとえ、一緒に犬や猫を飼ってもらえなくてもいい。ただ、シャルロッテが動物と触れあっていることで、幸せを感じていることを理解してさえくれれば、それだけでよかった。
(もう過ぎた思い出だけど)
その後、二十回の見合いを経る中で心ないことを言われたこともある。けれど、後悔はない。シャルロッテの噂が広まったからこそ、カタルはアッシュの継母にシャルロッテを選んだのだろう。
(こんな本読んだら、アッシュに会いたくなってきた! お勉強中だけど、こっそり覗けばいいよね)
シャルロッテは書庫の本をぐるりと見回す。まだまだ知らないことは多い。いずれ、すべてを読もうと心に誓って書庫を出た。
そしてまっすぐ別邸へと向かう。
しかし、本邸の廊下を歩いている途中で声を駆けられた。――侍女のマリンだ。
「シャルロッテ様? 今までどちらにいらっしゃったのですか?」
「ちょっと書庫で本を読んでいたの。何か用?」
「他のメイドがシャルロッテ様を見かけたと言っていたのに、どこにもいらっしゃらなかったものですから心配してしまって」
シャルロッテは頭を横に振る。
(絶対誰にも言わないから大丈夫!)
シャルロッテは表紙の狼を見て、眉尻を下げた。表紙に描かれた狼の頭を優しくなぞる。
(きっと、寂しかっただろうな……)
この狼にだって家族はいたはずだ。愛する人のために、すべてを捨てて海を渡る。それはどれほど怖いことだっただろうか。
そして、愛する人のために狼だった記憶すら奪い、狼は本当の意味で孤独になったはずだ。
今は皇族の数も多いため、一人で苦しみを抱える必要はないのかもしれない。けれど、彼らは常に孤独と戦っている。結婚相手にすら本当のことを言えないなんて。
(私も、元婚約者に夢を打ち明けるかすごく悩んだもんなぁ~)
シャルロッテは「こんなに私のことを想ってくれている彼なら、私の趣味を受け入れてくれるかもしれない」と、何度も自問自答した。やはり、シャルロッテも理解されたかったのだ。
たった一人でいい。生涯シャルロッテを理解してくれる人と出会いたかった。たとえ、一緒に犬や猫を飼ってもらえなくてもいい。ただ、シャルロッテが動物と触れあっていることで、幸せを感じていることを理解してさえくれれば、それだけでよかった。
(もう過ぎた思い出だけど)
その後、二十回の見合いを経る中で心ないことを言われたこともある。けれど、後悔はない。シャルロッテの噂が広まったからこそ、カタルはアッシュの継母にシャルロッテを選んだのだろう。
(こんな本読んだら、アッシュに会いたくなってきた! お勉強中だけど、こっそり覗けばいいよね)
シャルロッテは書庫の本をぐるりと見回す。まだまだ知らないことは多い。いずれ、すべてを読もうと心に誓って書庫を出た。
そしてまっすぐ別邸へと向かう。
しかし、本邸の廊下を歩いている途中で声を駆けられた。――侍女のマリンだ。
「シャルロッテ様? 今までどちらにいらっしゃったのですか?」
「ちょっと書庫で本を読んでいたの。何か用?」
「他のメイドがシャルロッテ様を見かけたと言っていたのに、どこにもいらっしゃらなかったものですから心配してしまって」