婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
 シャルロッテは何度も耳を撫でる。そのうち、カタルやオリバーのように狼の姿を隠して生きるようになるのだろう。最近では、アッシュが狼になることも減ってしまった。
 しかし、シャルロッテのわがままで成長を妨げることはできない。アッシュは人間の姿を維持できなければ、この小さな世界から出ることができないのだ。

「アッシュも! ママが好き……」

 アッシュはギュッとシャルロッテを抱き着き返すと、恥ずかしそうに顔を上げた。子ども特有のぷにぷにの頬っぺたを赤く染める姿はかわいらしい。
 あまりのかわいらしさに心臓が飛び出るかと思ったほどだ。

(うちの子がかわいすぎる……!)

 シャルロッテはアッシュを抱き上げた。

「今日のお勉強はもうおしまい! あんまり頑張りすぎるとお耳が疲れちゃうでしょ?」

 耳を隠すという行為がどれほど大変かはわからない。しかし、アッシュの様子を見るに楽ではないのだろう。アッシュは「うんっ!」と元気よく返事をすると、狼の姿に変わった。
 やはり、まだこの姿が本人にとってもしっくりくるようだ。
 腕の中で尻尾をぶんぶんと振る小さな狼は撫でまわしたくなるほどかわいい。

(やっぱりどの姿もかわいい……!)

 アッシュはそのままシャルロッテの腕の中で眠ってしまった。
 相当疲れていたのだろう。オリバーが苦笑をもらす。

「シャルロッテ嬢が来てくださって助かりました」
「アッシュ、すごい頑張っていたみたいですね」
「はい。必死で可哀想なくらいでした」
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