婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
 シャルロッテは垂れた耳を撫でる。

「じゃあ、お耳が隠せるようになっても、ママにだけこっそり見せてくれる?」
「うんっ!」

 勢いよく三角耳が立ち上がる。尻尾も嬉しそうに左右に揺れていた。

(カタル様にも耳と尻尾があれば、何を考えているのかわかるのにな~)

 いつも期限が悪そうなのだ。

「あっ! いけない! 朝食の時間っ! アッシュ、急いで準備しよう!」

 朝食の時間を思い出したシャルロッテはアッシュの身支度整え、後ろ髪を引かれる思いで本邸に戻った。
 ずっとアッシュのところにいたいところなのだが、そうも言っていられない。カタルと共に朝食を摂らなければならないからだ。
 カタルとシャルロッテが顔を合わせるのは、朝食と夕食の二回だけ。彼は忙しく、ほとんどの時間を執務室で過ごす。毎日の訪問が後を絶たない様子から、忙しいというのは本当なのだろう。
 朝食の席に座らなくても怒られはしない。しかし、カタルと会話をする機会が一回分減ってしまうのも事実だった。
 シャルロッテが駆け足で食堂にたどり着いたころ、彼は朝食を半分食べ終えたところだった。

「遅いな。また息子のところに行っていたののか?」
「はい! お腹が空いたら可哀想でしょう?」
「ならば、君もあちらで食べればいい」
「そうはいきません。私はカタル様との食事を楽しみにしているので」

 シャルロッテは満面の笑みをカタルに向けた。彼の眉がピクリと跳ねる。これは「何を言い出すんだ」という顔だろうか。

「アッシュは今日も元気でした。朝からたくさん食事を摂って、元気に走り回っています」
「……そうか」

 カタルはつまらない報告でも聞いているような態度で相槌を打った。

(自分の息子のことなのに!)

 シャルロッテは頬を膨らませて朝食のパンをちぎる。湯気の立ったパンにシャルロッテはすぐに機嫌を直した。
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