婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
 温めたふわふわのパンにたっぷりのバターとジャムを塗って食べる朝食は至福だ。アッシュを撫でる次に好きだと言っても過言ではない。

「それで? 他にも話したいことがあるんだろう?」

(なんだ、冷たい態度をとりつつも聞きたいのね!)

 その証拠に、カタルの食事の手が止まっている。アッシュがどう過ごしているのか、気になるのだろう。

(素直になればいいのに! やっぱり計画実行すべきね)

 シャルロッテはアッシュについてたんまりと語ったあと、カタルをまっすぐ見て言った。

「カタル様にお願いがあるんですけど……」
「なんだ、改まって」
「新しく服が欲しいのですが、一緒に選んでいただけませんか?」

 シャルロッテは上目遣いでカタルを見た。彼は眉根をわずかに寄せると、小さくため息を吐く。

「金のことは気にせず好きに選んできたらいい」
「そんなっ! 婚約したばかりなのに、一人で買い物に行ったらなんと噂されるか……!」
「元々『変人令嬢』と呼ばれているんだ。少しくらい噂されても何も変わらないだろ」
「変なあだ名はこれ以上増やしたくありません! 婚約者なんだから、少しくらい付き合ってくれてもいいじゃないですか」
「忙しい」
「そこを何とか……! お願いできませんか?」

 シャルロッテは、真面目な顔でカタルを見つめた。しかし、彼は頭を横に振った。
 そして、彼は面倒くさそうにナプキンで口元を拭うと朝食の席を立つ。

(だめかぁ……)

 カタルを外に連れ出すのは難しそうだ。彼の背中を見つめながら、シャルロッテはがっくりと肩を落とした。
 足音がぴたりと止まる。
 彼は少しのあいだ逡巡したのち、ため息を吐いた。

「……明日、午後からだ」
「本当に!? いいんですか!?」
「あまり騒ぐならなしだ」

 シャルロッテは慌てて両手で口を押える。そして、小さな声で言った。

「明日、よろしくお願いします」
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