婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
 何をこわがる必要があるのだろうか。

「……動物とは違う」

 カタルが低い声で言った。

(ああ、そういうことね)

 カタルは「獣人がこわいとは思わないのか?」と聞きたいのだろう。ニカーナ帝国では獣人は絶対悪として教えられる。動物が好きとは違う次元だと言いたいのだろう。

「アッシュはアッシュだし、カタル様はカタル様でしょう?」
「だが、君とは違う」
「違ってもいいじゃないですか。アッシュもカタル様も、そしてオリバー様も優しいのは知っていますし」

 一緒に暮らして彼らの優しさに触れていれば、こわがるほうが難しい。獣人は凶暴で、人間を虐げてきた。しかし、シャルロッテの知る三人の獣人はみんな、シャルロッテを虐げるようなことはしない。
 カタルもなんだかんだ言って、シャルロッテのことを気遣っているのだ。いつもこわい顔をしているが、優しい心を持っているのがわかる。
 カタルは小さなため息を吐いた。

「君は本当に変わっているな」
「その変わっているは褒め言葉として受け取っていいですか?」

 シャルロッテは「えへへ」と笑った。

「カタル様はもう少しにっこりしたほうが、こわくないと思います」

 シャルロッテは両手で自分の口角を持ち上げる。彼はいつも眉間に皺を寄せて難しい顔をしている。怒っているとか、そういう問題ではない。彼がいるだけで空気が張り詰めるのだ。
 それでは、周りも不安になるだろう。

「こういう顔だ」
「少し笑うだけで印象も変るのに~」
「……うるさい」

 そうこうしているうちに、馬車は目的地に到着した。
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