婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
 アッシュはシャルロッテの頭を撫でる。耳がないのが一緒だと言いたいのだろう。彼は嬉しそうに笑う。健気な彼の気持ちにギュッと胸が締めつけられた。
 アッシュはまだ、シャルロッテと違うことが気がかりなのだろう。

「そうだ! 今日はとっても頑張ってるアッシュために、パパとお洋服を買ってきたの!」
「ふく?」
「そう、アッシュが着る服だよ」

 シャルロッテはカタルから荷物を受け取ると、服を一着取り出した。

「ほら、これ。パパがアッシュのために選んだんだよ」
「これ、アッシュの?」
「そうだよ~! どうかな?」

 よく見えるように広げると、アッシュは目を輝かせた。洋服とシャルロッテ、そしてカタルを順番に見る。

「気に入った?」

 シャルロッテが問うと、ふくふくと頬を赤く染めて小さく頷く。相当嬉しかったのだろう。その反応が愛らしく、シャルロッテの頬が幸せで落ちてしまいそうだった。
 アッシュはピンクのリボンタイを指差して、嬉しそうに笑う。

「ママといっしょ」
「これが?」

 シャルロッテの服にはリボンタイはない。シャルロッテは意味もわからず首を傾げていると、アッシュがシャルロッテの髪を優しく掴んだ。

「あっ! ママの髪の色とお揃いなんだね!」
「うんっ! アッシュ、好き」

 恥ずかしそうに言うアッシュに、シャルロッテの胸はいっぱいだ。アッシュはカタルを見上げた。そして、おずおずといった様子で口を開く。

「パパ、ありがと……」

 緊張しているのか、声が小さい。アッシュにとっては勇気を振り絞ったのだろう。
 カタルの眉間に薄く皺ができた。
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