婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
第七章 カタルの過去
カタルはじゃれ合う二人をただ呆然と眺めていた。
胸の苦しさが何からくるのか。その明確な理由はいくつも思いつく。しかし、これだという確信は持てなかった。
シャルロッテはベッドの上に洋服を広げ、アッシュに一着ずつどこが可愛いのかを説明している。それが必要な行為なのかはわからない。けれど、アッシュは尻尾を振りながら、嬉しそうに聞いているから正解なのだろう。
微笑ましい母と子の様子だというのに、胸が痛かった。
「カタル様、大丈夫ですか?」
シャルロッテが心配そうにカタルの顔を覗き込む。彼女の言葉に同調するようにアッシュが不安そうに鳴いた。
「ああ、大丈夫だ。私は仕事が残っているから本邸に戻る」
「カタル様っ!?」
カタルは早口で言うと、シャルロッテの返事も聞かずに足早に別邸をあとにした。
(やはり、人間になるとよく似ている……)
カタルは息を吐き出しながら、庭園に出た。仕事ができるような気分ではなかったのだ。庭園に置かれたベンチに腰掛け、空を見上げる。夜色に溶けた空が広がっていた。
「カタル様っ!」
振り向くと、シャルロッテがドレスの裾を捲し上げ、走って向かってきていた。彼女はカタルの元まで来ると、大きく息を吐き出す。
「どうした? 何か用か?」
「なんだか調子が悪そうに見えたので……。迷惑だったらすみません」
彼女は「隣、失礼します」と言って、カタルの隣に座った。彼女は少しずうずうしいところがある。しかし、そのずうずうしいところに救われている部分もあった。
二人は何かを言うわけでもなく、空を見上げる。
沈黙が続いた。その沈黙に耐えきれず、カタルは口を開く。
「君のお陰で息子は元気になった。感謝する」
胸の苦しさが何からくるのか。その明確な理由はいくつも思いつく。しかし、これだという確信は持てなかった。
シャルロッテはベッドの上に洋服を広げ、アッシュに一着ずつどこが可愛いのかを説明している。それが必要な行為なのかはわからない。けれど、アッシュは尻尾を振りながら、嬉しそうに聞いているから正解なのだろう。
微笑ましい母と子の様子だというのに、胸が痛かった。
「カタル様、大丈夫ですか?」
シャルロッテが心配そうにカタルの顔を覗き込む。彼女の言葉に同調するようにアッシュが不安そうに鳴いた。
「ああ、大丈夫だ。私は仕事が残っているから本邸に戻る」
「カタル様っ!?」
カタルは早口で言うと、シャルロッテの返事も聞かずに足早に別邸をあとにした。
(やはり、人間になるとよく似ている……)
カタルは息を吐き出しながら、庭園に出た。仕事ができるような気分ではなかったのだ。庭園に置かれたベンチに腰掛け、空を見上げる。夜色に溶けた空が広がっていた。
「カタル様っ!」
振り向くと、シャルロッテがドレスの裾を捲し上げ、走って向かってきていた。彼女はカタルの元まで来ると、大きく息を吐き出す。
「どうした? 何か用か?」
「なんだか調子が悪そうに見えたので……。迷惑だったらすみません」
彼女は「隣、失礼します」と言って、カタルの隣に座った。彼女は少しずうずうしいところがある。しかし、そのずうずうしいところに救われている部分もあった。
二人は何かを言うわけでもなく、空を見上げる。
沈黙が続いた。その沈黙に耐えきれず、カタルは口を開く。
「君のお陰で息子は元気になった。感謝する」