婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
「息子は、君のような女性が母親になって幸せだろう」

 カタルは静かに言った。本心だ。本来の姿を愛し、優しく包み込んでくれる母親。それはカタルが幼いころも求めていた母親像だ。

「他人事みたいに言わないでください」

 シャルロッテはわずかに眉間に皺を寄せて言った。怒りや葛藤がひしひしと伝わってくる。

「カタル様がもう少し歩み寄ってくれたら、アッシュはもっと幸せになれると思うんです!」

 彼女はカタルの手を強く握り絞める。エメラルドグリーンの瞳が苦しそうにカタルを見つめた。

「やっぱり、私だけではだめなんです。何か事情があるのかもしれませんが、もう少しだけ、アッシュと関わってくれませんか? そしたら――……」
「あれは私の子ではない」
「……え?」

 カタルは思わず言ってしまった。パッと彼女の手が離れていく。大きく見開かれた目は左右に揺れている。

「……どういうことですか? だって……」

 彼女の声が震える。そして、押し黙った。

(誰にも言わないと決めていたのに……)

 誰も巻き込まないと決めていた。それなのに、言ってしまったことを後悔する。しかし、言ってしまったことを覆すことはできない。
 カタルは小さく息を吐き出した。

「少し、長くなるが、いいか?」
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