婚活難民令嬢の幸せもふもふ家族計画~愛のない結婚で狼皇子の継母になった私のはなし~
 その言葉に、シャルロッテは小さく頷いた。

 ◇◆◇

 カタルとピエタ侯爵家のクロエとの婚約が決まったのは四年ほど前のことだ。当時、カタルは恋愛にさほど興味はなかった。どうせ、カタルの本当の姿を愛してくれる女性はいない。独身を貫くことも考えたが、皇族には子孫を残す義務があった。
 この広い帝国を守るためには数が必要だ。人間たちは知らないが、海の向こう側ではいつだって獣人たちがこの帝国を狙っていた。
 そんな獣人たちからこの帝国を守ることが皇族の役割であり、初代皇帝の悲願でもある。
 愛する人を守りたい。
 皇族に生まれた以上。狼の血を引く子孫をより多く残さなければならない。
 だから、カタルは身分も年齢も妥当な女性と結婚することにした。
 候補者は三人。カタルは一人ずつ、確認したことがあった。

「君はどうして私を結婚相手に選んだ?」

 この質問に二人は「以前からお慕いしておりました」と答えた。頬を染め、酒に酔ったような顔でカタルを見つめていたのだ。
 しかし、クロエだけは違った。

「結婚に愛など必要ないと思いましたので」

 まっすぐな答えに、安堵したのを覚えている。

「私は皇弟妃という地位に魅力を感じているのです。私なら、完璧な妃としての役割をこなしてみせます」

 彼女の企画案でも発表するかのような言葉。
 カタル自身、下手な愛は必要ないと思っていた。どうせ、本当の姿は隠したまま一生を共にするのだ。
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