旦那様、不倫は契約違反です。我慢の限界ですので覚悟なさいませ。
平穏が訪れました
不倫騒動が落ち着いて数ヶ月、私はとても平穏で満ち足りた生活を送っていました。
ブティックもハロルドが仕事を手伝ってくれるおかげで、以前よりもたくさんのお客様に楽しんでいただいています。
「メアリー様、見積書の作成が完了したのでチェックお願いします」
「店内の模様替え、指示通りにやっておきましたよ。いかがでしょうか」
「業者が来ましたので対応しておきました。荷物はこちらに置いておきましたので」
……なんだか手伝わせ過ぎでしょうか。
これではノーマン様の二の舞になってしまいます。
愛想を尽かされる前に休んでいただかないと……!
「ハ、ハロルド……、あの、最近働き過ぎですよ。ブティックの方は良いですから休んでください。過労でお身体を壊してしまいます」
「大丈夫ですよ、お休みはきちんといただいていますし。……それとも、お手伝いするのはご迷惑でしょうか?」
「迷惑なんて、そんな! ハロルドはとても良く働いてくれています。いつも感謝していますよ。でも……いえ、それなら良いのです」
シュンとしたハロルドが子犬のような表情を見せるので、休ませることが出来ませんでした。
こ、これは大丈夫ですよね?
私は休ませようとしたのですから、ハロルドの意思、ですよね?
私は復讐されたりしないですよね!?
それにしても、最近ハロルドは性格が変わってきているように思います。
今の方が親しみやすくて、私は好きですけれど。
あ、もちろん好きって言うのは好意的だって意味で……。
嫌だわ。私ったら、何を考えているのでしょう。
「メアリー様? お顔が赤いですが、体調が悪いのですか? 私の心配より、ご自身が休まれたほうが……」
ハロルドに顔を覗き込まれて、すぐ近くで目が合いました。
ハロルドってこんな顔をしていたのね。……なんて、見つめたら失礼ですわ。
「え? あぁ、いえ大丈夫です! ちょっと暑いだけです。窓、開けますね」
ハロルドだけではなく、私も少しおかしくなっているようです。
顔が熱くなってきました。
窓を開けて冷たい風が入って来たのに、不思議です。
チラリと横目で見ると、ハロルドはもう書類整理を再開しています。
私は一体何に焦っているのでしょうか。
「そういえば、先代公爵からお手紙が来ていましたよ。メアリー様はもう読みましたか?」
「そうだったわね。ちょっと読んできます」
その場を離れられて幸いでした。
顔が赤くなっているのを、これ以上見られたくありませんもの。
「まあ! これは……」
自室に戻って先代公爵からの手紙を読むと、嬉しい知らせが書かれていました。
なんとハロルドが陞爵し、伯爵になるとのことです。
男爵が伯爵になるのは異例ですが、今回の件での功績が認められたようです。
先代公爵の後押しも大きく影響しているのでしょう。
そして伯爵になった上で、この領地の正式な領主となることが決定したのです。
「ハロルド! ハロルド! この手紙を読んでください。あなたが伯爵になるって……!」
「あぁ、その内容でしたか。私も昨日知ったばかりです。驚きですよね。僕は単に代理として領地を守っていただけなのに」
「知っていたのですか? もっと喜んで良いのですよ? そうだ! ハロルドが伯爵となるなら、所有権をお渡しできますね。ハロルドが運営してくださっているだから、当然所有権も持つべきですわ」
ハロルドより私の方が興奮してしまいました。
でもこれは喜ばしいことです。
領地の管理者がちぐはぐだった状態が、ようやく正常に戻せるのですから。
「そうですね。そうか、所有権も僕に……」
嬉しいことのはずですが、なぜかハロルドは浮かない表情をしていました。
ブティックもハロルドが仕事を手伝ってくれるおかげで、以前よりもたくさんのお客様に楽しんでいただいています。
「メアリー様、見積書の作成が完了したのでチェックお願いします」
「店内の模様替え、指示通りにやっておきましたよ。いかがでしょうか」
「業者が来ましたので対応しておきました。荷物はこちらに置いておきましたので」
……なんだか手伝わせ過ぎでしょうか。
これではノーマン様の二の舞になってしまいます。
愛想を尽かされる前に休んでいただかないと……!
「ハ、ハロルド……、あの、最近働き過ぎですよ。ブティックの方は良いですから休んでください。過労でお身体を壊してしまいます」
「大丈夫ですよ、お休みはきちんといただいていますし。……それとも、お手伝いするのはご迷惑でしょうか?」
「迷惑なんて、そんな! ハロルドはとても良く働いてくれています。いつも感謝していますよ。でも……いえ、それなら良いのです」
シュンとしたハロルドが子犬のような表情を見せるので、休ませることが出来ませんでした。
こ、これは大丈夫ですよね?
私は休ませようとしたのですから、ハロルドの意思、ですよね?
私は復讐されたりしないですよね!?
それにしても、最近ハロルドは性格が変わってきているように思います。
今の方が親しみやすくて、私は好きですけれど。
あ、もちろん好きって言うのは好意的だって意味で……。
嫌だわ。私ったら、何を考えているのでしょう。
「メアリー様? お顔が赤いですが、体調が悪いのですか? 私の心配より、ご自身が休まれたほうが……」
ハロルドに顔を覗き込まれて、すぐ近くで目が合いました。
ハロルドってこんな顔をしていたのね。……なんて、見つめたら失礼ですわ。
「え? あぁ、いえ大丈夫です! ちょっと暑いだけです。窓、開けますね」
ハロルドだけではなく、私も少しおかしくなっているようです。
顔が熱くなってきました。
窓を開けて冷たい風が入って来たのに、不思議です。
チラリと横目で見ると、ハロルドはもう書類整理を再開しています。
私は一体何に焦っているのでしょうか。
「そういえば、先代公爵からお手紙が来ていましたよ。メアリー様はもう読みましたか?」
「そうだったわね。ちょっと読んできます」
その場を離れられて幸いでした。
顔が赤くなっているのを、これ以上見られたくありませんもの。
「まあ! これは……」
自室に戻って先代公爵からの手紙を読むと、嬉しい知らせが書かれていました。
なんとハロルドが陞爵し、伯爵になるとのことです。
男爵が伯爵になるのは異例ですが、今回の件での功績が認められたようです。
先代公爵の後押しも大きく影響しているのでしょう。
そして伯爵になった上で、この領地の正式な領主となることが決定したのです。
「ハロルド! ハロルド! この手紙を読んでください。あなたが伯爵になるって……!」
「あぁ、その内容でしたか。私も昨日知ったばかりです。驚きですよね。僕は単に代理として領地を守っていただけなのに」
「知っていたのですか? もっと喜んで良いのですよ? そうだ! ハロルドが伯爵となるなら、所有権をお渡しできますね。ハロルドが運営してくださっているだから、当然所有権も持つべきですわ」
ハロルドより私の方が興奮してしまいました。
でもこれは喜ばしいことです。
領地の管理者がちぐはぐだった状態が、ようやく正常に戻せるのですから。
「そうですね。そうか、所有権も僕に……」
嬉しいことのはずですが、なぜかハロルドは浮かない表情をしていました。