彼の溺愛の波に乗せられて
どのくらいそうしていたのか、ゆっくりと回された腕の力が緩まり顔を上げる天寿。

お互いの吐息が唇にかかるほど近くにいる。

この距離をどちらが埋めるか…
焦らし合ってるみたいに。

天寿の伏せた瞳の視線は私の唇に向けられている。

今にも欲に負けてしまいそうで、それでもいいかななんて思う程に。

ソワソワしてくる身体と高鳴る鼓動。

すごく今、もどかしい。

スッと私の耳のあたりに伸びてくる天寿の大きな手からは熱を感じる。

私も天寿の唇に視線を向けてしまう。

このまま耳を澄ましていたら、聴こえないかな。
天寿の気持ちとか。

唇から天寿の瞳へと視線を移せば天寿も私の目を見た。

重なり交わる互いの視線は、絡み合ってまるで目と目でキスしてるみたいに思えた。

揺れる瞳を追いかける。

鼻と鼻が今にもくっついてしまいそう。
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