彼の溺愛の波に乗せられて
「おお。来てるな」

波のサイズはだいたい8フィート〜30フィート。
およそ15メートルから20メートルのビッグウェーブだ。

アメリカ西海岸でも有数のポイントで、プロサーファーの中でも選ばれた人しかラインナップできない。

一発勝負で油断は禁物だ。

まぁ大会にエントリーしてる訳ではないからその分気は楽ではあるけど、一歩間違えば命の危険が待っている。

俺は何としてでも無事に帰らないと。
それでも100%の安全はない。
相手は自然界だ。

イベントが始まり次々にチャレンジして行くエントリーメンバーたち。

俺は別枠でおまけみたいなもんなので出番は最後だ。

見ている限り今日の波はわりと機嫌が悪そうだ。
みんなすぐに飲まれてしまっている。

今のところ成功者はいない。
こういう時もあるのが自然界を相手にする競技の醍醐味でもあるけど。

これを突破した時の達成感は半端ないのを俺は知ってる。

限られた人間にしかわからない海の楽園が待ってる。

あのウェーブの中を颯爽と駆け抜ける世界は自然が作り上げた芸術としか言えない光景だ。
< 111 / 301 >

この作品をシェア

pagetop