彼の溺愛の波に乗せられて
すると間も無くして寝室のドアが静かに開いてそっと天寿がベッドに入ってきた。
そして眠っているフリをする私の頬にチュッとひとつキスをして枕の間に腕を通して、背中を向ける私に腕まくらをすると後ろから抱きしめてきた。
なんで…
なんで私にこんな事するの?
その人を想いながら代わりに私を抱きしめてるの?
そんな事を思いながらもこの抱きしめられた温もりを手放したくないと思ってしまう。
私を置いてどこにも行かないで…
何度もさっきの電話の愛の囁きが頭の中で、繰り返し再生される。
嫌だ…
他の人に愛を囁かないで…
スーっと天寿の寝息が聞こえて来る中私はその日息を殺して枕を濡らした。
こんなに近くにいるのに、天寿がとても遠くにいるように感じた。