彼の溺愛の波に乗せられて
「あ! ごめんなさい! あの、本当にありがとうございました」
母親が両脇に立つ子供達と一緒に頭を下げる。
「何かお礼をさせてもらえないだろうか?」
父親がそう言い出した。
「いえ、そんな、お礼なんて大丈夫ですから。丈慈くんと翠ちゃんが無事で良かったです」
そう言えば父親が徐ろに名刺を取り出したので俺もすかさず名刺を出して交換した。
"神楽コーポレーション 社長 神楽 純平"
わーお。
まじか。この人が…
会社の名前だけは俺でも知ってるわ。
「天寿くんはお店をしているのか? 若いのに立派だな」
「あ、はい。恐縮です」
「それじゃ今度食べに行かせてもらうよ。本当に子供たちをありがとう」
「はい、是非。歓迎します。それじゃ失礼します」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん! ありがとう!」
するとこれまで大人しかった妹の翠ちゃんが俺たちの足元に抱きついてきた。
かわいい。
「もう、迷子ならないようにな。頼もしい兄貴がいて良かったな」
「うん! ジョージ大好き!」
ははは。