彼の溺愛の波に乗せられて
そしてその場を離れて再び桜並木を見て回る。

「丈慈くんと翠ちゃん、可愛かったね」

雅がニコニコと俺を見上げながら笑う。

「ははは。そうだな。子供かわいいな」

「うん。それにとても素敵な夫婦だった」

「ああ。俺たちもなれるよ」

そう言って見下ろせば、雅は頬を赤く染めた。
クククク。

「子供、楽しみだな?」

ニヤっとして見せれば案の定恥ずかしそうにしながらもコクっと頷く雅。

「帰ったら早速頑張るか?」

俺はいつでも準備はできてる。

「もう少しだけ…もう少しだけ天寿を独り占めしてたい。あと一年くらい」

具体的な話をしたのは初めてだった。
俺を独り占めって…
可愛い過ぎるだろ。

「そうだな。愛してる」

俺はそっと雅のこめかみにキスを落とした。

すると近くにいた人たちが見ていたようでキャーっと悲鳴が上がる。

「皆んな見てるよ!」

ぐっと引き寄せられ耳を傾ければコソっと怒られた。

「くくくく」

ここは人が多いからやたら見られるな。
雅が馬鹿みたいに可愛いからだ。

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