彼の溺愛の波に乗せられて


それでもやはり気になってしまって遠くからまた彼を見れば手を上げられて、とりあえず会釈を返した。

それからというもの特に向こうからアクションはないけど、会えば会釈をする仲になった。
それだけ。

相変わらず彼はあまり笑わない。
表情筋硬すぎなんじゃない?
なんて思ってた。

なのに今日の彼ときたらなによ。
デレデレしちゃってさ。

ああいうモデルみたいな女性が好みなのね。
そりゃ私なんかに笑うわけないか。

さっきも見たら、隣の女性の髪を撫でてたし。
その瞬間目が合ってなぜだか私はすぐにそらしてしまった。

「ねぇ! あの人めちゃくちゃカッコいい! なにあれ!」

愛莉がどうやらイケメンサーファーの存在に気づいたようだ。

「ほんとだねー」

私は棒読みで答える。

「ねぇー雅ー。本当にさ、少しは興味持ちなさいよ!」

私はあーんと焼けた肉を返事の代わりに食べてみせた。
花より団子よと。

そしてキャーと高い声が僅かに聞こえてまたイケメンサーファーの席を見ると、彼が隣の彼女の口を慌てた様子で押さえていた。

随分とスキンシップが多いですこと。
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