甘いミルクティーを君に、


「…本当に、あ…ありがとう。嫌なことばっかり言ってごめん…。」


泣きたいわけじゃない。


ただ、やっぱり笑ってバイバイなんて私にはできる気がしない。


外が暗くて良かった、こんな顔最後に見せたくない。


「…謝んなよ…俺こそ、決断できなくて、ごめん。」


大樹の顔も暗くてよく見えない、けど声は震えていた。


「…だ、いじょうぶ…鍵、ここに置いとくね。…何か忘れてたら、捨ててくれて良いから…。」



“大丈夫“いつしかそれが私の口ぐせになっていた。



私は鞄から大樹が今年の誕生日にくれた淡いピンク色のキーケースを取り出し、机の上に置いた。


もうここには戻らない。戻れない。



「…大樹、元気でね…。」



「…あ、ま、麻由!」



私は逃げるように部屋を出て、絵里佳が待つ車へと走った。


これ以上話すと、別れがたくなる。


“やっぱり別れたくない“って


きっと大樹を困らしてしまう。



私はそんなに出来た女じゃない。


< 11 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop