甘いミルクティーを君に、
「…本当に、あ…ありがとう。嫌なことばっかり言ってごめん…。」
泣きたいわけじゃない。
ただ、やっぱり笑ってバイバイなんて私にはできる気がしない。
外が暗くて良かった、こんな顔最後に見せたくない。
「…謝んなよ…俺こそ、決断できなくて、ごめん。」
大樹の顔も暗くてよく見えない、けど声は震えていた。
「…だ、いじょうぶ…鍵、ここに置いとくね。…何か忘れてたら、捨ててくれて良いから…。」
“大丈夫“いつしかそれが私の口ぐせになっていた。
私は鞄から大樹が今年の誕生日にくれた淡いピンク色のキーケースを取り出し、机の上に置いた。
もうここには戻らない。戻れない。
「…大樹、元気でね…。」
「…あ、ま、麻由!」
私は逃げるように部屋を出て、絵里佳が待つ車へと走った。
これ以上話すと、別れがたくなる。
“やっぱり別れたくない“って
きっと大樹を困らしてしまう。
私はそんなに出来た女じゃない。