シンデレラのないしょ話　～悪役令嬢だって恋をする～
「シンデレラがママハハや姉からいじめられず普通にご令嬢として育って、舞踏会で王子様に見染(みそ)められて、それで物語になるのかい？」

「いや……」

「白雪姫のママハハが白雪姫を可愛がって育てて、美しく育つのを喜ぶだけだったら、お話になるのかねえ？」

「…………」

「私達が住む童話の世界はほとんどが勧善懲悪(かんぜんちょうあく)にできているから、悪役がいなくちゃ話が進まない。主人公は自薦(じせん)でも他薦(たせん)でも応募する人がたくさんいるからすぐに決まるけど、どの話も悪役はなかなか決まらない。誰だって悪役になんか進んでなりたいものか。私達悪役はね、それでもお話を進めるためにと引き受けたんだよ。みんなのためにね」

　鏡(かがみ)の魔女(まじょ)さんの話を聞いているうちに、最初につっかかってきた二人組も野次馬(やじうま)達も、おとなしくなっていった。
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