シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
「オレも聞いたことがあるぞ。白雪姫のママハハの魔女(まじょ)は、白雪姫の結婚式に熱々の鉄板(てっぱん)の上にのって、あまりの熱さに狂ったようにおどって死ぬんだろ?」

「ひでえな。いくら悪役だからって残酷(ざんこく)な話だよな」

「大丈夫、実際は熱したように見せて赤くぬった鉄板(てっぱん)の上で、とっておきのダンスを踊っただけだから」

「ええー!そうだったんだ!」

 魔女(まじょ)さんが種明(たねあ)かしすると、みんなが笑った。

「それでね、その場面用に新しいドレスとくつを新調(しんちょう)してダンスもたっぷり練習したもんで、せっかくだからみんなに見せようと思って、今日はここに来たんだよ」

「それで、真っ赤なドレスだったのね」

「そう」


魔女(まじょ)さんがにっとほほえむ。大輪のバラが咲いたようなあでやかさだった。
 男達が「……おお……」と低く呟き、グリムオオカミが「はう…っ!」と声にならない声をあげた。
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