シンデレラのないしょ話　～悪役令嬢だって恋をする～
　今になって過去(かこ)の色々なことが線と線でつながった気がした。

　お母さんが自分の名前を“ママハハ”と言ったこと。

　町で出会った少女達が私の名前を聞いて「いじわるな人とは遊べない」と去っていったこと。

　彼女達に名前と呼べるものがなかったこと。

「いじめたくない……いじめたくなんか、ない……」

　泣き出した私を、お父さまはやさしく肩を抱いてなぐさめてくれた。

「やさしいね、ジャボット。私たちは君の本当の気持ちをわかっているよ。他の誰が何と言おうと、君は私のかわいい娘だ」と父。

「ごめんなさいね、今まで本当のことを言えなくて。明日からは私もこの子を一緒にいじめるからね。あなた一人にいじめはさせないわ」とお母さん。

「新しいお母様もお姉様も、やさしい方達で私本当にうれしいの。だからドンドン私をいじめちゃってちょうだい。これでも結構(けっこう)丈夫なんです。なぐられてもけられてもビクともしません！明日からどんな風にいじめられるのかな――って思うと、ワクワクしてるんです‼」と妹。

　おかしい。

　お父さま→お母さん→妹と順を追うごとに言ってることがおかしい。

　特に妹は保護欲(ほごよく)をかき立てられる可憐(かれん)さに反して、言っていることが豪快(ごうかい)な気がする。
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