シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 彼女がカボチャの馬車(ばしゃ)で乗りつけると、「見たこともない立派(りっぱ)で美しい姫君(ひめぎみ)到着(とうちゃく)しました」と王子様に報告(ほうこく)が入り、玄関まで直々(じきじき)にお出むかえするのだ。
 
 王子様がお連れした姫君の美しさに、みんなが感嘆(かんたん)のため息をつく。
 
 そして王子様はそのまま、十二時の(かね)が鳴ってシンデレラがお城を後にするまでの間ずっと、彼女のそばからはなれないのだ。
 
 その視線(しせん)はシンデレラに釘付(くぎづ)けになったまま…………

 
 私は静かにその瞬間(しゅんかん)を待った。
 
 王子様がシンデレラに恋する瞬間(しゅんかん)を。
 私の失恋(しつれん)が決定的になる瞬間(しゅんかん)を。
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