シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 やっと出せた声は間が抜けていたけれど、それを合図(あいず)に現実と思考(しこう)をへだてていた(まく)が、シャボン玉が割れるようにパチンとはじけた。

「あ……えっと……王子……様……」
 
「お(じょう)さん、ダンスのお相手をしてくれますか?」

 そう言うと王子様は、返事(へんじ)を待たずに私の(こし)()いて((こし)()いて!!)、広間の中心へと(おど)りながら移動(いどう)した。

 プリンス親衛隊(しんえいたい)の中に、私の顔を覚えている人がいるんじゃないかと一瞬(いっしゅん)考えたが、「なんなの?あの子!!」「(だれ)よ、一体!」「見たことない顔ね」とさわぐ声に、私のことは(だれ)も覚えていないようだとホッとして、王子様とのダンスに集中することができた。
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