シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 夢の中でダンスした時よりもずっと王子様のお顔が近く、お(はだ)のキメの細かさや瞳のブルー、ごく淡く青みをおびた白目部分や、バッサバサのまつげなどがよく見えて、解像度(かいぞうど)がハンパない。

 そのうえ視界(しかい)のほとんどをお顔がしめ、没入感(ぼつにゅうかん)もハンパない。
 
 目の前がクラクラして何度も気を失いそうになりながら、必死(ひっし)で王子様のリードに合わせる。

 ところで自慢(じまん)ではないが私はダンスが上手くない。いや、上手(うま)下手(へた)というより、むしろ《(おど)れない》。
 
 お父様を相手に一、二回練習(れんしゅう)したことはあったが、そもそも社交界にデビューする気がなかったので、教わっていても身が入らなかったし、「私もやる!」と言いながらシンデレラがお父様を投げとばしてしまったので(妹は東洋の格闘技(かくとうぎ)『ジュードー』とまちがえたと言っていた)、それ以来わが家ではダンスの練習(れんしゅう)をすることがなかったのだ。
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