シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 そして、照れたように一度目を伏せたあと、真剣(しんけn)な顔になり……目をとじてゆっくりと私に近づいてきた。
 
 心臓がこわれてしまったみたいに、耳を、頭を、体中を鳴らしている。

 ……こ、これって……私も目を閉じた方がいいのかしら……?
 
 これが、私の、ファースト・キ……

 ……スとはならなかった。
 
 王子様が「あ……」という声とともに、その場にころがってしまったからだ。
 
 支えようとした私も、一緒(いっしょ)になってころんでしまった。

 二人とも四阿(あずまや)のベンチの前でしゃがみこんでいたため、足がしび(しび)れてしまったのだ。

「……はぁ――――、もう。いい雰囲気だったのに」
 
 王子様は情けない声で起き上がろうとするが、足のしびれがとれないのか、またへたりこんでしまった。
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