シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 私が十二歳か十三歳の時だった。
 町のメインストリートで王室の方々がパレードを行うという知らせが入った。
 
 噂は町中を駆け巡り、国王陛下や王妃様、王子様が通る時に投げる為の、色とりどりの紙ふぶきや花びらを山ほど用意し、みんなワクワクしてその日を待っていた。

 そして空が晴れ渡ったある日、パレードが行われた。

 白い馬に乗り立派なよろいを着た騎士が先導(せんどう)し、美しい馬車が何台も何台も連なって行進してくる。
 その夢のような美しさに、私はうっとりしながら、カゴに入れた紙ふぶきをせっせと投げかけた。

 お母さんに「今からそんなに投げてしまったら、王様達が通るかんじんな時に紙ふぶきがなくなってしまうわよ」と笑われたが、どちらにしろ王様一家が通りかかる時、私は紙ふぶきを投げることができなかった。

 屋根のない、パレード用の馬車に乗り込んだ、立派なヒゲの国王陛下。今までみたこともないような、宝石がちりばめられたドレスを着た王妃様。そして…

 私と同じくらいの年頃の少女達で構成された《プリンス親衛隊(しんえいたい)》が
 「キャ――――!」
 と黄色い声を上げる。
 
 童話『シンデレラ』のもう一人の主役、王子様が乗る馬車がやってきたのだ。
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