シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
「やっぱり、だめです。あの子は物語の主人公の立場を全うして、今日のためにたくさん準備や早替えの練習をしてきたんです。王子様とのハッピーエンドのために……。それを知っている私が、シンデレラの幸せをうばうことなんてできません」
 
そしてもう一度、王子様の抱擁(ほうよう)を引き()がそうともがいた。

「シンデレラは、私の妹は本当にいい子なんです。ヒロインにふさわしい子です。役の上とはいえ毎日毎日家事(かじ)をこなして、グチのひとつも言わないで、いつも明るく笑ってて……」
 
 そう、私はだれよりも知っている。シンデレラがどんなに素敵(すてき)な女の子かってことを。
 
「心映えだって、とってもいいんです。性格も竹を割ったようで……」
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