シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 いや、むしろ本当に平凡な、名もなき存在(そんざい)の方がましだ。何といっても私は、シンデレラをいじめる(・・・・)姉なのだから。

 いつかやってくる舞踏会の夜、王子様がシンデレラを見染めるその場面には、私も同席する。
 彼は一国の王子として、会場にいるみんなに笑顔を(えがお)向けるだろう。

 でもその笑顔の下で、私を見る時「これが(いと)しいシンデレラをいじめてきた意地悪な姉か」と思うのだ。

 絶望(ぜつぼう)しか、なかった。
 この日から、私の心は(やみ)をかかえている。
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